まちづくりデジタルコラム
1.住民によるまちづくりプラン
○津久井湖周辺地域まちづくり委員会
○写真集「わが町 中野」
○“ゆうきプラン”
○津久井湖周遊歩道計画
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二宮 公雄
二宮都市研究所
代表 |
平成11年10月22日の神奈川新聞にこんな記事が出ていました。
「自分たちの地域は自分たちでつくりたい」−。津久井湖周辺地域まちづくり委員会と津久井湖周辺地域振興協議会はこのほど、行政に頼るだけでなく、住民自身の町づくりへの積極的な参加も定めた町づくりプラン「ゆうきプラン」をまとめた。プランは近日中に、津久井町に提出される予定だ。
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津久井湖周辺地域は、神奈川県津久井町の中心部に位置しており、美しい津久井湖を囲む小網、三井・名手、三ヶ木、又野、中野の5つの地区によって構成されています。
記事は、プランの内容を次のように解説しています。
「ゆうきプラン」という名は、「夢のある未来・潤いある生活・きれいな自然」というプランの狙いの頭の文字をとって名づけられた。プランでは5地区ごとにテーマを上げ、1ボランティア活動など住民自身で実践できる活動、2行政と協力する活動、3行政に依頼する活動−の3つの柱について、地区ごとに詳しい内容を記している。
例えば、役場のある中野地区では、1地域の歴史などの調査、あいさつ運動の推進、樹木や草花を植える、2全町民参加のクリーンキャンペーン、3津久井湖の護岸工事、道路の整備−などという具合だ。
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私は、この「ゆうきプラン」策定にあたって津久井湖周辺地域まちづくり委員会と津久井湖周辺地域振興協議会のアドバイザーとして参加し、ほぼ3年に亘って地域の人達と一緒に町を歩き、町づくりの目標や内容について話し合ってきました。
5つの地区は、お互いに隣接し合ってはいるのですが、それぞれに違う特色を持っています。津久井町の中心地として役場や神奈川県の合同庁舎、日赤病院などがある中野地区、津久井湖観光の入り込み拠点となっている小網地区、あるいは湖を南に望み、南斜面で背後が山林になっている津久井町の奥座敷三井・名手地区。
これら異なった特色を持っている各地区の人々が街づくり委員会でとても熱心に検討した結果が“ゆうきプラン”です。
中野地区では、この計画が出来上がる前の平成11年6月にまちづく活動の一環として3年半の期間をかけて、地域の昔と今を映す写真集「わが町 中野」を自主出版しています。東京オリンピックが開かれた昭和39年に津久井湖は誕生したのですが、それ以前に地域の人々に愛されていた相模川の様子なども収められています。
“ゆうきプラン”は、5つの地区の個性を生かしながら、全体の地域をつなぐまちづくりを目指しています。
これを象徴しているプロジェクトが津久井湖周遊歩道計画です。これは5つの地区を結び、津久井湖を一周することが出来る湖畔の遊歩道です。
美しい津久井湖を私たちのものに
津久井湖を都会の人々の水源地だけにしておくのではなく、私たちの湖として取り戻し、湖を私たちの生活の中で活用する工夫が必要です。そこでまちづくりの中で考えられたのがこの津久井湖周遊歩道計画です。
四季折々に見られる、湖と自然が織りなす、美しい景観をいつまでも、どこの場所でも、誰でもが気軽に、安全に散歩できる。この津久井湖周遊歩道計画はそんな津久井湖に変えていきたいとのみんなの願いを実現するものです。
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この津久井湖周遊歩道をこんな遊歩道にしたい!として60ほどの提言が並んでいます。
*車椅子でも押せる凹凸段差が無い道
*乳母車を押しながら子どもと並んで歩ける幅員がある道
*ハンカチを湿らせる水場がある道
*津久井湖の景観を楽しみながらお弁当を食べる場所がほしい
*男坂、女坂のように体力にあったルートを選べる道
*地元の間伐材の丸太や杉チップを使い、地場産業を活性化させる道
*クリーンエネルギーを防災・防犯システムに使った道
*桜並木や紅葉並木がある道
*道の真中に大きな木がある道
*まちの歴史探検が出来る道
*俳句や短歌の句碑が道端にある道
*自然を利用した手作りのアスレチックやアドベンチャー遊具があり、子どもたちに楽しい道
*あたたかな手作りが感じられる道
1本の遊歩道が地域の豊かさを大きく変えることを予感させます。
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