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まちづくりデジタルコラム


1. 中心市街地活性化を考えるもう一つの手法

池田 利道

株式会社リダンプランニング
代表取締役


(1)商店街が元気を無くした15の要因(その1)

・郊外大型店との競合

としお:

はじめまして。
まちづくりって、何だか難しそうな話で、とまどってます。

まちこ:

そう構えないで。じゃあ身近なところから。
まちなかの商店街が元気を無くしていますよね。
あれって、何故だと思います?

としお:

郊外に大きなスーパーができて、客を取られたからでしょ?

まちこ:

スーパー大手6社の平成10年度の新開店は、郊外が64%、
駅前や商店街の中などの中心市街地が17%、残りは住宅地。
でもね、平成2年は郊外が21%、中心市街地が58%だった。
郊外と中心市街地の数が逆転したのは平成5年のことなの。

としお:

7年前か。商店街の元気が無くなったのは、もっと前からだ。

まちこ:

そう。私は、商店街と大型店の関係は3つの時代に分けて
考えられると思っているんです。
最初は、商店街と中心市街地内の大型店が競合した時代で、
だいたい1980年代までがこの時代。
次が中心市街地の大型店と郊外の大型店が競合した時代。
これはバブル崩壊後のこと。

としお:

つまり、1980年代までの最初の時代に、
商店街と大型店の間の勝負がついちゃったってことですね。
で、3つ目の時代は?

まちこ:

大型店が中心部や近隣に回帰しようとしている時代。
この時代が本格的に始まるのはまだ先のことになるけれど、
その徴候は確実に現われている。

としお:

新聞で読んだけど、「大店立地法」っていう法律ができて、
まちなかに大型店を作るのは難しくなってきてるんでしょう。

まちこ:

その話をし出すと複雑になるから、別の機会にしましょう。
でも、郊外と中心市街地っていう対比ばかり考えすぎると、
ものごとの本質を見失ってしまうことは確かよね。

としお:

郊外に大型店が出店できないようにしたら、商店街が元気になる
なんていう単純な話じゃないっていうことですね。


・駐車場の不足

としお:

駐車場はどうですか。駐車場がないから商店街に行かない。
現代人は歩くの嫌いだし、地方では特に歩かない。

まちこ:

そうかしら? じゃあ質問。
としおさんは、郊外のスーパーに買物に行った時、歩かないの?

としお:

えっ! そういわれると、駐車場のも店の中もやたらと広いから、
ぐったりするほど歩いてますね。

まちこ:

それにね。まちの中って、結構たくさん駐車場がある。

としお:

でも、どの駐車場が空いているか分からないし、料金も高い。

まちこ:

それはサービスやシステムの問題でしょう。
駐車場が無いから商店街が元気を無くしたっていうのとは、
ちょっと問題が違うんじゃないかしら。
では、もう一つ質問。コンビニはよく使う?

としお:

よく行きますよ。便利だから。

まちこ:

コンビニに駐車場はあるの?

としお:

なるほど。駐車場と、商店街の関係も、
そう単純ではなさそうですね。


・時間消費の魅力不足

としお:

これはどうです? 最近の大きなショッピングセンターには、
映画館やアミューズメントなんかがたくさんあって楽しい。
だから、ついつい財布のヒモが緩んじゃう。
商店街にはそんな楽しさが欠けている。

まちこ:

時間消費性とか、エンターテインメント性っていうことね。
楽しいことは、買物をする上で、とても大事なことだけど、
問題は楽しさをどう組み立てるかっていうこと。

としお:

難しいなあ。もっと分かりやすく言って下さいよ。

まちこ:

例えば、舗装をカラータイルにしたり、彫刻を置いたり、
商店街を楽しい雰囲気のモールに変えていくことは、
全国で色々と取り組まれてる。

としお:

お金はかかるけど、きれいで楽しくなって、
お客さんが戻ってくればいいじゃないですか。

まちこ:

でも、表面だけ飾っても、お客さんが戻ってくるとは限らない。
アメリカでは30年位前から、ダウンタウンの衰退が問題になって、
連邦政府の肝いりで、モール化が進んだの。
だけど、そのほとんどが失敗しちゃった。

としお:

さっきの駐車場の話もそうだけど、
ショッピングセンターのまねだけしてもダメってことですね。
結局、借金だけしか残らない。
何か、日本の農業の話を聞いているみたいだなあ。

まちこ:

だから、時間消費とか、エンターテインメントは大切だけど、
商店街には、ショッピングセンターとは違う楽しさがある。
そこを大切にしなきゃあ。

としお:

今の話を聞いてて思い出したんだけど、
僕の小学校の友達に黒木君っていうのがいて、
彼の家は商店街の中の風呂桶屋さんだったんだ。
黒木君のお父さんが、店の前で風呂桶を作ってるのは、
いつまで見てても飽きなかった。

まちこ:

手づくりって、すごいパフォーマンスですよね。
お店とお客さんの間で、ちょっと危ないジョークが
飛び交うなんてのも、商店街の楽しさ。
「生活エンターテインメント」っていうのかしら。


・消費者ニーズへの対応の遅れ

としお:

商店街っていうと、品揃えも、値段も、サービスも、
旧態依然としてますよね。
消費者のニーズは日々変わっていっているのに、
商店街の方はそれについて行けていない。

まちこ:

偉い先生たちが商店街の診断をすると、ほとんど必ず
「消費者ニーズの変化への対応が遅れている」
っていう指摘がある。見飽きちゃうぐらいに。
こういう答のない指摘ってほとんど意味がないと思うけど、
それにしても虚しい言葉よね。

としお:

そう言われれば、百貨店がダメになった時も、
スーパーが倒産する時も、「消費者ニーズへの対応が遅れた」
からと言われますよね。

まちこ:

お客さんが来なくなったのは、お客さんの心がつかめなくなった
からっていうのは当たり前のことでしょ。
問題は何故そうなったか。そこを考えていかない限り、
商店街に元気を取り戻すなんてできっこない。

としお:

まちこさん。そう興奮しないで。
でもまいったなあ。全部否定されちゃった。

まちこ:

否定なんかしてないわよ。
としおさんの言ったことは全部その通りなんだから。

としお:

でも、現象的な問題ではあるかも知れないけれど、
根本的な問題ではないし、根本的な問題を解決しない限り、
商店街は元気を取り戻せないって言うんでしょう。

まちこ:

じゃあ、次回までに、何が根本的な問題か、
考えておいてよ。

としお:

このシリーズって宿題が出るんですか。
困ったなあ。誰か知恵を貸して下さい。

(この項続く)

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